月黄泉の屡迦探し

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月黄泉の屡迦探し

「はぁぁ~~…」 深い溜め息を吐いて、月黄泉は読んでいた本を閉じた。 「…どうしよう…。もう読み終えてしまった…」 机の上に積み上げられた数十冊の本を全て読んでしまったらしく、退屈凌ぎが無くなったのを困っている。 「屡迦殿の所へでも行くか…」 そう呟きながら立ち上がり、部屋を後にした。 「屡迦殿」 部屋のドアをノックしながら、名を呼んでみる。 返事は聞こえて来ない。 一度首を傾げ、そっとドアノブに手を伸ばす。 鍵は開いている様だ。 思い切ってドアを開けると、部屋は静まり返っている。 「……屡迦殿…?」 やはり返事はない。部屋へ入って、辺りを見回しても、屡迦の姿は何処にもない。 「何処へ行かれたのだ……?……ん?」 ふと、机に視線を落とす。 決して綺麗とは言えないその机は、何やら管理資料やら、何たらデータやら、小難しい事を細々と書いた書類が散乱していた。 その中に、明らかにそれらの書類とは無関係な紙が混ざっていた。「…これは……?」 手にとって見ると、それは 「…楽譜…?」 びっしりと音符や記号、そして詩が書かれていた。 しばらくじっと見ていたが、はっとしてそれを机に置いた。 「違う。屡迦殿を探していたんだ…!」 月黄泉は何故か慌てて部屋を出た。
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