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俺は今結婚式のため教会にいる。 俺の親友と…俺の元彼女のだ。 「綺麗だよ…」 …そんなの当たり前だ。 俺が愛した人なんだから。 そんな訳で、俺の心は、周囲の祝福モードとは程遠かった。 結婚式が終わり裏庭に行ってみると、意外なことに未来がいた。 噴水の前に佇む未来は本当に綺麗だった。 「誠…?」 踵を返しかけたとき、未来に声を掛けられた。 「…よぉ」 「来て…くれたんだ…」 「…まぁな。親友と親友の彼女の結婚式だぜ?」 俺は、無理矢理笑った。 「…ありがと」 「…」 重たい沈黙が流れた時、 「未来」 俺の親友…未来の旦那が遠くから声を掛けた。 「…あっ、憲介。今行くね」 「あぁ。先に行ってるな」 「うん」 憲介が去っていくと、 「…じゃぁね」 と呟き、歩き出した。 「あ…未来」 今引き止めなければもう会えない…そんな気がした。 …というよりも、考えるより先に言葉が出て来た。 「…何?」 「その…、本当にす―」 『本当に好きだったよ』 そう言いかけた言葉は、勢い良く吹き上がった噴水によってかき消された。 「えっ…?」 もう1度『本当に好きだったよ』と言おうとした時、式中に見た未来の幸せそうな顔が頭に浮かんだ。 俺がしてやれなかった…幸せそうな顔…。 「………。結婚おめでとう。幸せにしてもらえよ」 俺は、精一杯笑った。 「誠…。…うん、絶対に幸せになるよ」 未来も笑い返すと、一度も振り返ることなく歩いていった。 「………さよなら」 俺は、未来の姿が見えなくなるまで見つめ続けた。 俺はきっと、こんな顔を見たかったんだ。
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