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俺と陽菜は、幼稚園からの幼なじみだ。 今は、同じ中学で図書委員をやっている。 「ちょっと匡貴!本棚の整理手伝ってよ!」 「ヘイヘイ…」 「んもぉ…。…あっ、この本♪」 今し方まで、呆れたように溜め息を吐いた陽菜だったが、本の山から1冊の本を手に取った。 「お前好きだな、その本」 「だって、初めて匡貴がくれた本と同じだもん」 「そうだったかぁ?よく覚えてるな」 「当たり前でしょ~」 昔から一緒だったから何でも言い合えた。 出来るなら、ずっと友達でいたかった。 でも…いつの間にか好きになっていた。 でも、俺は、自分の気持ちを伝えようとはしなかった。 自分の想いを伝えて、今までの関係がなくなるのが怖かった。 そんなある日。 「匡貴!」 いつも通り陽菜がじゃれてきた。 「ぅわっ!何だよ、陽菜」 「………」 「陽菜…?」 いつもなら、くだらない冗談を言って笑い合う所だが、その日は、何も言ってこなかった。 「…陽菜?」 「匡貴…あのね…」 「ん?」 「転校…することになっちゃった」 陽菜は、無理矢理笑った。 でも、その笑顔は、あまりにも悲しそうだった。 「転校…」 今聞いた言葉が、頭の中で渦巻いていた。 何か言いたかったが、物が詰まった様に声が出てこなかった。 俺達は、残された時間を楽しむことに決めた。 ところが、些細な事で喧嘩してしまった。 「おはよ…」「…おぅ」 大した会話もなく、今日は、陽菜が出発する日。 でも、俺は家にいた。 「あんた、お別れに行かなくていいの?」 「………。行ってくる!」 やっぱり、このままじゃ終われなかった。 自転車を飛ばして駅に着く頃と、ホームには、すてに電車が来ていた。 「陽菜っ!!」 「匡貴…!?」 「間に合った…」 「どうしたの…?」 「俺…俺っ、お前にちゃんと言えてないから…。ごめんっ!それと…す―」 俺の言葉を遮るように発車を告げるベルが鳴った。 「匡貴、たまには…あの本思い出してね。それと…私…私ね、匡貴が―」 最後の言葉は、しまった扉で聞き取ることが出来なかったが、唇が“大好き”と言っていた。 俺は駅を出ると、学校へ向かった。 あの本を見るためだ。 「これか…ん?」 そこには、見慣れた文字からの手紙があった。 『匡貴へ。初めて、改まった手紙を書きます。あの時はごめんなさい。それと…私は匡貴が大好きです』 それは、精一杯の告白だった。
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