3人が本棚に入れています
本棚に追加
俺と陽菜は、幼稚園からの幼なじみだ。
今は、同じ中学で図書委員をやっている。
「ちょっと匡貴!本棚の整理手伝ってよ!」
「ヘイヘイ…」
「んもぉ…。…あっ、この本♪」
今し方まで、呆れたように溜め息を吐いた陽菜だったが、本の山から1冊の本を手に取った。
「お前好きだな、その本」
「だって、初めて匡貴がくれた本と同じだもん」
「そうだったかぁ?よく覚えてるな」
「当たり前でしょ~」
昔から一緒だったから何でも言い合えた。
出来るなら、ずっと友達でいたかった。
でも…いつの間にか好きになっていた。
でも、俺は、自分の気持ちを伝えようとはしなかった。
自分の想いを伝えて、今までの関係がなくなるのが怖かった。
そんなある日。
「匡貴!」
いつも通り陽菜がじゃれてきた。
「ぅわっ!何だよ、陽菜」
「………」
「陽菜…?」
いつもなら、くだらない冗談を言って笑い合う所だが、その日は、何も言ってこなかった。
「…陽菜?」
「匡貴…あのね…」
「ん?」
「転校…することになっちゃった」
陽菜は、無理矢理笑った。
でも、その笑顔は、あまりにも悲しそうだった。
「転校…」
今聞いた言葉が、頭の中で渦巻いていた。
何か言いたかったが、物が詰まった様に声が出てこなかった。
俺達は、残された時間を楽しむことに決めた。
ところが、些細な事で喧嘩してしまった。
「おはよ…」「…おぅ」
大した会話もなく、今日は、陽菜が出発する日。
でも、俺は家にいた。
「あんた、お別れに行かなくていいの?」
「………。行ってくる!」
やっぱり、このままじゃ終われなかった。
自転車を飛ばして駅に着く頃と、ホームには、すてに電車が来ていた。
「陽菜っ!!」
「匡貴…!?」
「間に合った…」
「どうしたの…?」
「俺…俺っ、お前にちゃんと言えてないから…。ごめんっ!それと…す―」
俺の言葉を遮るように発車を告げるベルが鳴った。
「匡貴、たまには…あの本思い出してね。それと…私…私ね、匡貴が―」
最後の言葉は、しまった扉で聞き取ることが出来なかったが、唇が“大好き”と言っていた。
俺は駅を出ると、学校へ向かった。
あの本を見るためだ。
「これか…ん?」
そこには、見慣れた文字からの手紙があった。
『匡貴へ。初めて、改まった手紙を書きます。あの時はごめんなさい。それと…私は匡貴が大好きです』
それは、精一杯の告白だった。
最初のコメントを投稿しよう!