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帰り道、私はまだぼうっとしながら歩いていた。
「広瀬、くん」
名前を大切に発音する。
だって、そうでもしないと夢と間違えてしまいそうだから。
「お~い。片桐」
私が絵を頼まれるなんて…本当に夢みたい。あの後二つ返事で承諾すると、キレーな笑顔で「ありがと」って言って…「じゃあまた詳しいこと教えに行きます」って帰って行った。あ…でもクラス聞かれてない…
「こら!!ムシすんなっバカタギリ美穂」
ゴスッ
「いったぁ~、この声は須本!今カバンで殴ったでしょ!!」
須本は高校から編入してきた。何かと私に絡んでくる、うっとうしいやつ。
「ボケッとしてやがるから目ぇ覚まさせてやったんだよ」
「最ッ低!」
「ニヤケた顔して何考えてたんだよ」
「ニヤ…っ!ニヤケてない!須本には関係ないでしょ!」
須本は急にマジな顔になる。
「職員室で喋ってたヤツのことか?」
「え?」
「喋ってたろ、さっき」
「…見てたの?」
「たまたまだよ。まさか惚れたのか?お前あいつ3つも下…」
「わかってるわよ、ほっといて!」
痛いところを突かれて、思わず私は走り出した。
「おい!」
本っ当にデリカシーないやつ!
「バーカーターギーリー」
…って、何で追っかけてくるの!?信っじられない!
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