聖人色(せいじんしき)

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トゥルルルル、トゥルルルル、がちゃ、ピー… ただ今電話に出る事ができません。御用の方は…出直せよ。 プッ、プーっプーッ…。 …………お前が出直せ。 あのヤロウ。また遅刻か? 今日この日のために新しく買った赤色に光る時計に、目をやりながら携帯電話を閉じる。長い溜め息。 「たくっ、あのバカ、今日は聖人色(せいじんしき)だぞ。」 俺の名前は龍牙暗鬼、今年で20歳になった。 聖人色に向けて、今日は長めの黒髪ストレートにポマードをつけ(おっさんか)、オールバックで決め、黒のスーツに映える赤のネクタイ、茶色の革靴で合わせてみた。 我ながら、完璧。 そもそも、聖人色とは20歳を迎えたもの全員が必ず通らなくてはならない一つの試練みたいなものだ。 この日を境に様々な事が変わっていく。 ある意味、20年間生きてきた自分の存在意義を試す儀式………。 ふーっ…。今考えたって仕方ない。 結局、何色になるかなんて今考えても仕方のないことだ。 気付くと、もう集合時間を過ぎていた。
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