頭脳派カイト

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「あの日は、雪の降る寒い夜じゃった。 日本人の女性で三十半ばくらいだっただじゃろうか。 子供を抱えて院の前に倒れておった。 その子供は背中に大きな切り傷をつけられ意識のない状態じゃった。 すぐ二人に応急処置を施そうとしたのだが女性は意識を取り戻し、「この子を先に助けて下さい。 そして目が覚めたらこのリングを渡して下さい。」そう言って自分は笑顔のまま頑なに治療を受けず、子供の治療が済むと「ごめんね。カイト。」と口を開けそのまま目を開けなかった。 本当に優しくて強い女性じゃった。」 「媽媽(お母さん)。」 「カイト! 父親を探すと言う事はカイトの身に危険があると言う事じゃぞ! 母親がそうまでして逃がした命を無駄にする可能性があると言う事じゃぞ!」 じいやは初めて声を荒げて言った。 「申し訳ありません。 もう決めた事ですから。」 カイトは揺るぎない決意で口を開いた。 「そうか、、、 辛くなったらいつでも戻って来なさい。」 その決意を読み取ったじいやは観念したようでいつもの優しい口調で語り掛けた。 「ありがとうございます。 そしていままでお世話になりました。」 カイトは深々と頭を下げ椅子から立ち上がると院を後にした。 「馬鹿カイトが!!」 影から見ていたハヤトは涙を浮かべて小さく呟いた。
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