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「あっつい……」
終日、人の多いヒレアスの市場。
一息つこうとと日陰に入ったフィルは長椅子に腰かけた。
びゅうっと風が身体を撫でる。
清清しいものの筈なのに、その熱さから更に汗がふき出た。
風が吹くと暑く、止むとまだマシになるとはおかしな感覚だ。
腰に引っ掛けた革製の水袋へと、無意識に手が伸びる。
キュポンと蓋を外し、口まで持っていった所で手に持つ水袋に気付いた。
フィルは急いでまたそれをしまう。
「危ない危ない……。貴重な水だし、むやみに飲んだらまた怒られる……」
数ヶ月前、護衛として雇ったディーンは金の使い方にすこぶるうるさい。
特にヒレアスへ入ってからはなおさらだった。
やれこの辺りの水は値が張るだとか水を我慢する精神力を付けろだとか。
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