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あの日思いを伝えた僕に 彼女は悲しそうに笑った 私、あと一ヶ月ぐらいで死ぬの だから誰とも付き合えないと 寂しそうにもう一度笑った そんな優しい答えで自ら独りを選んだ彼女を見て 僕は退くことをやめた じゃあその一ヶ月を僕にくれないか。 それを聞いて彼女は笑うのを止めた 残った一ヶ月 僕の我が儘に付き合って欲しい 差し出した僕の手を見て彼女は俯いた しばらくして差し出したままのの手を見て 彼女は僕に抱きついた 眼が覚めて 自分に愕然とした さっきまで見ていた世界と 今目の前にある世界のどちらが本物なのか 区別できなかったからだ それほどに彼女の甘い匂い 優しい暖かさ 抱きしめた身体の細さ 震える指の細さ―― そういった彼女を構成する全てがあまりにも生々しく 眼が覚めた僕の身体に残っていた 思い知らされた 僕にとって彼女の存在が どれ程大きく重いモノだったのか あれから十年と少したった今も 僕の中には頑として据わりつづける彼女がいること 僕は…… これからも彼女を好きで 愛し続けて行くんだ ああ…… 僕の我が儘に付き合わせるつもりだったのに 結局、僕が君の我が儘に付き合わされっぱなしだった
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