エレベーター

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エレベーター

午後8時、僕は自宅へと向かい足を早めた。 自宅であるアパートの前に着き、暗証番号を入力すると自動ドアが開いた。 そのまま真っ直ぐ歩き、エレベーターのボタンを押した。 程なくしてエレベーターが到着し、11階のボタンを押してドアを閉めようとした時、スーツ姿の中年の男性が向かってきた。 僕は「開」ボタンを押した。 男性は軽く僕に会釈し、8階のボタンを押した。 ドアが閉まり沈黙が流れる。 僕は子供のころ負った首の火傷の跡をポリポリとかいた。 昔からの癖である。 すると男性が突然照れ笑いをしながら僕にこう語りかけてきた。 「実は僕、こっちの世界とは違う別の世界でリストラにあってこっちの世界にやって来たんです。 ところがこっちの世界でもリストラにあっちゃって… もうどうしようもないですよね。」 男性は困ったような顔をしながら首をかいた。 僕ははっとなった。 男性にも僕と同じ場所、同じ形の火傷の跡があるではないか。 そういえば顔立ちや雰囲気もなんとなく僕に似てる。 するとエレベーターが8階に着き、ドアが開いた。 男性は再び僕に会釈をし、エレベーターを出た。 翌日、アパートの屋上からあの男性が投身自殺をした。 僕は将来、自殺するんだと思った。
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