天の声

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天の声

サッカーの試合で僕がゴールキーパーをしている時のことだった。 敵チームのキャプテンがドリブルをしてどんどんと迫ってきた。 遂に敵チームのキャプテンはゴールの目と鼻の先まで来てシュートを放つ体勢をとった。 すると突然、空の彼方から声がした。 「左にシュートを打つぞ。」 僕は咄嗟に左へ飛び込んだ。 するとシュートは左へ放たれ、僕はシュートを止めることが出来た。 以来、テストで問題が分からない時や好きな女の子に告白するときなどに天の声が聞こえた。 不思議と天の声の言うことに従うと物事が良い方向へ進んでいった。 もはや僕に怖いものはなかった。 ある日、寝坊をしてしまい学校に遅刻しそうになった。 全速力で家から学校へ向かったが、運悪く途中で赤信号に引っかかってしまった。 僕は息を切らしながら信号を待った。 するとあの天の声が聞こえた。 「大丈夫。渡っても車は来ないよ。」 その声を聞いた僕は左右を確認することなく横断歩道を渡ろうとした。 その時、後ろから凄い勢いで引っ張られ尻餅を付いてしまった。 すぐさま後ろを振り返ると亡くなったはずの祖母だった。 僕が呆気にとられていると凄い勢いで走ってきた大型トラックが僕をかすめ、電柱に突っ込んだ。 すると再び天の声が聞こえた。 「あーあ、死ねばよかったのに。」 それ以後、祖母を見ることは無かったし、天の声を聞くことも無かった。
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