【守りたい】

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店に戻ると加代ちゃんは花束を造っていた おそらく休憩は取っていないだろう そんな子だった加代ちゃんは それにも増して、嬉しくて仕方ない筈だ 初めてお客様の花束を造る… 今日の花束は一生の思い出となり加代ちゃんの記憶に残るだろう 思い出していた… ボスに初めて花束を造ることを許された日のことを… 男性客の注文で奥様の誕生日の花束だった ボスの忠告… 贈る側と受け取る側の気持ちをしっかり頭に描け 目を閉じても束ねられるはずや それくらいに気持ちを込めるんや ええな… 緊張と喜び… きっと加代ちゃんも今は同じ気持ちだろう また二階堂恵理のことを考えていた 本当に来るだろうか ーー脳みそをつつかれる…ーー この前、[小町]でキクちゃんに釘をさされた 恵理ちゃんがちゃんと自由になるまで待ちや… 今は絶対あかんで… 何度も釘をさされた そんな事ありえないと…そんな気持ち全くないと… きっぱりと 言い訳していた 加代『大地さん、どうですか?厳しいご意見を…』 ペロッと舌を出す 大地『どんなプレゼントなん?』 加代『はい、贈り主は二十代の男性です、受取る方は同年代の女性で勿論彼女さんです、今日の夜は夜景が見えるレストランでお食事だとか…その方も彼女さんも特に好きな花はないとの事でした、予算は5千円でメッセージカードの中にリングを入れたいと、これがカードです』 花束は見事だった 正にホワイトクリスマス カスミソウがメインに使われていた 薄いピンク色のハイブリッドチースがバックを飾る、オレンジのバラと黄色のバラが一輪ずつ… その周りをアイビーが囲む オレンジのバラがが彼女さんで 黄色いバラが彼氏さん といったところだろう simple is the best お客様はきっと感動する 加代ちゃん、合格だ 大地『加代ちゃん合格!何も文句ない』 加代『ホントですか!ありがとうございます!でも、なんか物足りないような…』 大地『いや、それでいいよ花折々のモットーだ《お客様にも想像させる》たくさん派手な花を束ねても暑苦しい、カスミソウをメインにしているやん?基本カスミソウはごまかしに使うもの、カスミソウをメインにするのは、意外に難しいんや…合格や』 加代ちゃんは深々とお辞儀をする そして初めての作品をフィルムに納めた… 涙を拭きながら… 加代ちゃんの努力の賜物だ
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