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また携帯の振動が響く
大地『気いつかわんと、出たらええよ…』
恵理『すみません…大丈夫ですから』
大地『旦那さんかい?』
恵理『はい…すみません、ひつこくて』
大地『心配なんやろね、二階堂さんは綺麗やし、判る気がする、旦那の気持ち』
何聞いてんだ…
恵理『そんなんじゃないです、ただの嫌がらせですいつもの事ですから逆になんかすみません』
キクちゃんはいつの間にかテーブルを移動していた
テーブルには彼女と二人
向かい合わせている
彼女のグラスにビールを注ぐ
お返しに注がれる…
思いっきって聞いてみる
大地『もしかして上手い事いってないん?』
恵理『はい…』
大地『ごめん、立ち入った事聞いた…』
恵理『いえ…そんな事ないです、こういう場に男性がいるのが許せないというか嫌いというか、残業が入ったりしても直ぐに電話入って、多分私に信用がないんです、7年振りなんです…こうやって外で皆さんと呑むの』
7年前にお見合い結婚
お互い31歳であり父親同士の付き合いもあって結婚に至ったのだと
それが過ちだった…と
彼女の旦那は異常なまでに彼女を束縛すると彼女は話してくれた
ただの束縛ではなくゲーム間隔というか
家では殆ど会話はない
外出、残業が入ると気が狂ったように電話やメールをしてくるのだと
結婚した途端に始まったこと
それから彼女は仕事も辞め友達との中も閉ざされる
それが普通なんだと自分に言い聞かす毎日だったと
旦那と言えばちょくちょく呑みに行き、何度か浮気もあったのだと
その度に言い訳を並べては泣き
手を挙げ
『お前だけ…愛してる…お前がいないと…』
だのと並べるのだと言う
外面の良い、気持ち悪い男を想像していた
彼女は既に『離婚』を考えている
もう決心しているのだと
だから自分の生活を守る為に仕事を始め
この場にも居るのだと…
決心をなかなかつけれなかったのは旦那の仕事にあった
出世、家柄、世間体…
某銀行の頭取の息子だという
幸い2人の間に子供が居なくて良かったこと
そんな話しを
静かに話してくれた…
『封印』が解かれ始めた
もう…
留まらない事を感じ始めていた…
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