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1時間ほど過ぎただろうか、いつしか店のお客はキクちゃんと2人だった
ママが席に戻り、『今日は忙しかった、やっと落ち着いて呑めるわ、そろそろ時間やし女の子帰したけど、ごめんやで…ゆっくりして行ってかまへんしあたしはトコトン付き合うで…』
普段は気品を漂わすママさんだが、安堵感からなのか
言葉がいささか雑だった
彼女の事が離れない
もう、解かれてしまったのだろうか…
キク『早紀ちゃん…連絡くるの?』
大地『いや、あれから一度もないです』
グラスを空にした…
ママが手際良く作る
グラスのなかで微かに響く氷の音が心地良かった
キク『元気ならいいんだけどね…可哀想にね…』
大地『キクちゃん…その話は…』
グラスを空にする…
キク『あっごめん、ダイちゃん見てると…早紀ちゃんの事ばかり思い出してね…ごめん…』
大地『いや、いいです』
ママ『早紀ちゃんかい?』
交差していた
過去と現実が…
早紀と二階堂恵理が…
交差していた
大地『キクちゃん?二階堂さん大丈夫かな?』
キク『大丈夫って…?』
大地『いや、携帯…尋常じゃないと思わん?』
キク『ん~思う…恵理ちゃんには残業も頼みづらい挙式が入ってる日はみんな残業だから…良く合間を縫っては電話してる』
大地『なんでそこまでやるんやろ、信用してない?信頼されてない?好きだから?ただの嫌がらせ?狂ってない?ヤバくない?』
グラスをまた、空にした
キク『さっき、話し込んでると思ってたら…色々聞いたんやね、でもダイちゃん!どうする事も出来へんで、止めときや…ややこしくなるだけやで』
大地『なんもせんし、ただ…気になっただけ』
ママ『なんや、ややこしそうやな…その娘の旦那はん、そんな男はきっとマザコンで気が弱くて、甘ったれで、なんの不自由もなく育って来たんとちゃうかな?自分の思うように行かへんかったら道端で寝転んでだだこねる大人バージョンや…』
ママの言っている事は当たっているような気がしていた
数え切れないお客と出会い、語り…きっと、我々よりは人を見る目は養われている筈だ
ママ『ダイちゃんその娘に惚れたんかいな?』
大地『やめてくれ、そんなんちゃうし、しかもさっき初めて会ったばかりや…』
ママ『キクちゃんの言う通りやで不倫はあかんで、どっちかが泣くか、両方共泣くか2人共笑える事はないしな』
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