二人ぼっち時間

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自分をほったらかしにして携帯電話に夢中になっている恋人の姿に、いたずらしてやりたいという子供心が芽生えた。 気づかれないように、そうっと背後から近づいていき、彼の手から携帯を奪った。 「あっ!」と小さな悲鳴を上げた彼に対し、そんなに驚くなよとたしなめ画面を覗いてみた。 「ちょ、返せよ!」 「いいじゃねェか。減るもんじゃねぇしよ。なになに…『昨日は頑張りすぎて腰が痛い。でもしんちゃんはピンピンしてる。年を感じるわぁ~。』」 後半は読むのも馬鹿馬鹿しくなるほどの内容だった。 そして何故隠していたかという理由が分かった気がした。 「って、てめっ!何書いてやがんだ!このバカ!天パ!」 「ちょ、待って晋ちゃん!天パは関係なくない?地味にコンプレックス指摘しないで!銀さんメンタル面は実はすんごい弱いんだからっ!この頭のようにデリケートなんだよデリケートっ。」 「なぁにがデリケートだっ!デリカシーの欠片もねェこと書きやがって!」 そう言って騒いでいると、台所の方から焦げ臭い香りが漂い始めたので慌て火を止めに走った。
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