二人ぼっち時間

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自分と坂田銀八の関係は『表向きは』教師と生徒だ。 自分が通う銀魂高校は有名国公立大学、飛翔大学の付属高校で全国から選りすぐりのエリートが集まっている。 自分は学歴なんか興味はなかったが、親は自分に学歴をつけたかったようで中学へ入学したての頃から「銀魂高校へ行け。」と耳にタコが出来るほど言われ続けていた。 もともと成績だけは悪くない(素行は別として)俺が銀魂高校に入学するのは難しいことではなかった。 親は「よくやった。」と誉めてくれたが、普段は俺の存在を無視するように扱うくせに、こういうときだけもてはやすなんて虫が良すぎる。 親の存在が煙たいというよりも気持ち悪く感じた瞬間だった。 もともと親とは反りが合わなかったので高校入学を機に、『自立するためだ』とそれらしい理由をつけて一人暮らしを始めた。 そして学校生活が始まって数週間経ち、ようやく平和な日々を過ごしていたときに、この男から付き合えと言われたのだ。 始めはタチの悪い冗談だと思って聞き流していた。 女顔の俺はよくこんな冗談に付き合わされていて、うんざりしていたので今回もか。とやれやれと感じていた。 しかし、冗談にしてはあまりにも頻繁にその話題を持ち出してくるので本気なのか?と聞いてみた。 「初めっから俺ァ本気だ。俺と付き合ってくれ。」 普段の気だるい様子が消え、燃えるような赤い眼で見つめられながら言われた。 その表情に呑まれたかのように俺は「あぁ。いいぜ。」と反射的に答えてしまった。 そしていつの間にか一緒に暮らすまでの関係になったのだ。 当初はどうかしている。と思っていたが、この男と付き合って良かったと思う。 この男に出会わなかったら、きっと俺は退屈な学校生活に飽きて転落してしまっていただろうから。
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