二人ぼっち時間

5/10
前へ
/30ページ
次へ
そんなことを思い出しながら少し焦げてしまったカレーを皿につぎわけた。 焦げ臭い香りとカレー独特な食欲をそそる香りにつられたのか、先ほどまで携帯を弄っていた銀八が手伝うよ。とスプーンを取り出した。 戸棚からスプーンとコップを取り出している姿を見て少し抜けた所はあるものの、やはりこの男は大人なんだなと実感した。 広い肩幅に、身体のあちこちにしっかりとついた筋肉。 その姿は恋人の背中というよりもむしろ、家族をしっかりと支える父親の姿のようだった。 まぁ、俺の父親は家族のことなんかほったらかしだったけど。 親に甘えたいという子供心からか、恋人に甘えたいという恋情からか、はたまたその両方の感情からか、俺はそのたくましい身体に抱きついた。 「おやおや晋ちゃあん、肌寒くなったのォ?」 「うっせ。」 憎まれ口を叩きながらも銀八は俺よりも大きな手で頭を撫でて、早く飯にしようぜと笑った。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

41人が本棚に入れています
本棚に追加