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暫くし、もう学校は目の前になった。
この調子なら、なんとか間に合う。
そんな時だった。
2人の目の前の空間が歪み、漆黒の裂け目が出来た。
全速力で走っている2人。
急に止まることは当然出来ない。
魁兎「ウオッ!」
兎稀「キャア!」
2人はそのまま裂け目に入ってしまった。
すると、視界は黒く染まり、妙な浮遊感が。
そう、ジェットコースターで落ちる時のような……。
兎稀「イヤァァァア!!落ちてるぅ~!!」
そう、2人は今落下している。
何故落ちているのかは分からないが。
ジェットコースターが苦手な兎稀。
魁兎も顔が少し引き攣っている。
暫くし、視界が戻った。
そこはかなりの高さ。
ビルの8階くらいの高さだ。
そこから2人は落下している。
上を見上げると、先程の裂け目が。
あそこから2人は落ちて来たのだろう。
兎稀「イヤァァァア!!落ちるぅ~!!死ぬぅ~!!」
叫んでいる間にも2人はどんどん落ちて行く。
段々と近づいて来る地面。
魁兎と兎稀は死を覚悟し、目を固く閉じた。
だが、いつまで待っても衝撃は来ない。
2人が不審がってゆっくり目を開けると、2人は空中でふわふわと浮かんでいた。
その高さは2メートルもない。
魁兎「んぁ?何だこれ?」
魁兎と兎稀は首を傾げた。
魁兎「って、ウオッ!!」
ドサッ――
急に2人が地面に落下した。
魁兎は辛うじて受け身を取ったが、兎稀はもろにお尻から落ちた。
兎稀「いったぁ~。急に落ちるなっての!!」
兎稀は頬を膨らませて怒った。
魁兎は周りをキョロキョロと見回している。
魁兎「此処、何処だ……?」
そこはどこかの路地裏のようだ。
だが、どこか違和感がある。
ジャリッ――
魁兎は手にあまり慣れない感触があるのに気がついた。
地面が土だ。
周りを見渡せば、木造の家ばかり。
現代の日本ではそうそうない景色。
魁兎「何処なんだよ、此処。映画村か何かか?」
魁兎は首を傾げ、兎稀は不安げに魁兎を見ている。
不意に魁兎が顔を上げ、眉間に皺を寄せた。
魁兎は急いで兎稀を引っ張って物陰に隠れた。
兎稀「どうしたの、魁兎?」
兎稀が小さな声で聞いた。
魁兎は人差し指を唇に当て、静かにするよう示した。
その目は真剣そのものだ。
兎稀もそんな魁兎からただならぬものを感じ、真剣な顔になった。
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