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「まだこの辺りに居るはずだ。手分けして捜せ。」
少し低い男の声。
何人かの走り去る足音。
「土方さん……。」
少し高めの別の男の声。
その声には刺が含まれている。
土方「あぁ、分かってる。……てめぇら何者だ?そこで何してやがる。」
先程の低い声の男。
こいつは土方と言うらしい。
どこか聞き覚えがある。
魁兎と兎稀は土方達にばれていたらしい。
声を掛けられたが、魁兎には答える気がない。
2人はだんまりを決め込んだ。
土方「良い度胸じゃねぇか。喋らねぇのなら、斬るまでだ。」
カチャッ――
この独特の音。
恐らくこれは真剣に手を掛けた時の音だ。
魁兎「ちょっと待った。誰も喋らないなんて言ってねぇぞ?」
魁兎は出来るだけ低い声で言った。
ゆっくりと慎重に物陰から出る2人。
2人の目に飛び込んできたのは、浅葱色のダンダラを紅く染めた2人の男の姿だった。
2人とも着物を着ており、腰には刀が差してある。
1人の男は鋭い目をした整った顔をしており、もう1人は女のような中性的な顔をしている。
2人とも髪は長く、鋭い目の男は項で緩く結び、女顔の男は高い位置で結んでポニーテールにしている。
兎稀が魁兎の手を強く握った。
その手は僅かに震えており、2人に恐怖を感じているようだ。
魁兎は状況を理解するために必死に頭を働かせた。
目の前にいる2人の男。
先程聞いた音からして、腰に差しているのは真剣。
ダンダラについているのも本物の血だろう。
先程から血の匂いがしている。
そして、2人は魁兎と兎稀に鋭い目を向けており、敵意を剥き出しにしている。
魁兎「(何なんだよ、もう……。)」
魁兎は深く長い溜息を吐いた。
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