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土方「おい、お前ら。変な格好しやがって。何者だ?こんな所で何してやがった。」
鋭い目の男、土方が言った。
魁兎は自分達の格好を確認した。
魁兎と兎稀は制服を着ている。
2人の学校の制服はブレザーで、魁兎は紺のズボンに長袖のカッターを着て、赤のネクタイを緩く締めている。
兎稀は紺のスカートに長袖のブラウスを着て赤のネクタイを緩く締めている。
2人にとってはいたって普通の格好。
近くには2人のエナメルバッグも落ちている。
兎稀「魁兎、私何か変な格好してる?」
兎稀は首を傾げた。
魁兎「いや、これはきっとそういうことじゃねぇと思うぞ?面倒なことになりやがった……。チッ。」
魁兎は小さく舌打ちし、右手で頭を掻いた。
魁兎「おい、お前。今は何年の何月だ?」
魁兎は女顔の男を指差した。
その男は訝しむような顔をした。
「今は文久3年の10月ですが?」
それを聞いた兎稀は不思議そうな顔をした。
兎稀「魁兎、何で幕末?今って平成じゃないの?」
魁兎は右頬を掻いた。
魁兎「あれだよ、あれ。ファンタジーとかでよくあるあれ。なんつーんだっけ?えーと……。」
魁兎は何かが思い出せないようだ。
視線をさ迷わせている。
兎稀「まさか、タイムスリップだなんて言わないよね?」
兎稀は頬を引き攣らせて言った。
兎稀は否定して欲しかった。
そんなことありえない、と。
魁兎「そうそう、それそれ!!」
だが、魁兎の反応はまさかの肯定だった。
兎稀は大地が揺れたように感じ、座り込みそうになったが、魁兎が手を強く握ってくれたお陰で何とか持ちこたえた。
魁兎の手が兎稀に安心感を与えた。
「さっきから何の話をしてるんです?」
男が眉根を寄せて聞いた。
まぁ、この2人の会話を理解できる者は此処、幕末の京には居ないだろう。
土方「とにかく、ついて来てもらうぞ。詳しい話は屯所で聞く。」
土方は2人に背を向けて歩き出した。
2人は顔を見合わせて頷いた。
2人は手を繋いだまま土方の後を追う。
その後ろには男がついて行く。
4人は人気のない路地裏を通って行く。
幸い、道中誰にも逢わなかった。
そういう道を選んで歩いていたということもあるが。
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