壊れ始めたもの

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天都が次に目を開けたのは、朝だった。あれから何時間が経ったのか。未だに天都は裸で、あちこちのかさぶたから流れた血が固まって居た。 「………学校…行かなきゃ」 ゆっくりと天都は起き上がり、乾いた血を剥がしてから服を着た。常に長袖の白いカッターシャツ。病的に白い天都の肌は、所々焼け焦げて居た。 階段を降りて、天都は玄関のドアを引いた。 「……今日…お弁当、要るっけ…?」 呟いた声も、誰に聞かれる事もなく。 朝早く住宅街を歩く天都。ジョギングや犬の散歩をする人とも擦れ違うが、今日は天都は何も言わない。何人かが訝しげに天都を見るが、誰も深追いはしない。 電車やバスを乗り継ぎ、学校に着いた。上履きを下駄箱から出そうとすると、鍵が掛かって居る。天都は不思議そうに首を傾げ、用務員に鍵を開けて貰い靴を履き替えた。 ガヤガヤと賑わう学校の廊下。何人かは不思議そうに天都を見る。天都はそれにも気付かず、下を向いた侭歩き続ける。 「おはよ…」 一番奥の教室の、後ろの引き戸。それを引いて天都が呟くと、クラスメートは驚いて天都を見た。天都はやはり気付かずに、机に向かう。 突然静まり返った教室に、天都は初めて疑問を抱いた。 「………な…に…?」 見渡すと、何人か人数が足りない。何時もならこの時間は、賑わって居る筈なのに。 突然由美が天都に駆け寄り、けたたましく叫んだ。 「天都、解ってるの?あなた今停学中なのよ!?」 天都の目が見開いた。天都には、周りがスローモーションのように見えた。 「…………え……?」 ゆっくりと見渡せば、その仕草に全員が爆笑する。 天都の頭に響く笑い声。それは、悪意の塊のように思えた。 天都は鞄をひっつかみ、教室から駆け出した。何人ものクラスメートが、天都の方を振り向く。 後ろからは笑い声が響いて居た。兎に角逃れるように、上履きの侭で天都は学校から飛び出した。
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