出逢い

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風祭天都(カザマツリ アマト)。 彼女は普通の…否、普通に見える女子高生だ。 彼女が普通でない理由は、彼女が多重人格障害だという事。診断はされて居なかった。唯、毎日当たり前のように記憶が抜けた。 天都は学校にあまり行かなかった。学校に行けば苛められるし、誰も天都の事を気にしなかった。上辺だけの友達は居る。然し、誰も本当の天都を見ない。 【天都…良いのかよ?】 学校の昼休み、弁当を食べながら天都が上辺だけの友達と話して居ると、声が聞こえた。 【風流(フウル)…】 天都の中には、10人の人格が居た。風流はその中でも、一番天都に近い存在だ。性格もそうだが、一番天都の事を考えて居るようだった。 【今日もまた、教科書隠されたろ?犯人解ってんじゃん。オレがぶっ飛ばしてやろうか?】 【止めてよ…そんな事しないで】 【でもよ…】 「天都?」 急に動かなくなった天都に、クラスメートの由美が話し掛けた。 心の中で会話して居た天都は、びっくりして持っていた箸を落とす。 「な、何?」 「まーた動かなくなってた。アンタ、食べながら夢見てんじゃないのぉ?」 由美と、他の二人が声を上げて笑った。天都には苦笑する事しか出来ない。 落とした箸を拾い上げようとすると、由美がそれを踏んだ。 「あっ、ごめん天都ぉ。あたし、足長いからぁ」 由美が残りの二人の笑いを求め、楽しそうに笑った。 天都は黙って箸を拾い、洗い場に行く。 【…教科書、隠したのゼッテーアイツらだ。お前、なんであんなのとツルんでんだよ?】 【…入学した時、由美達が初めて話し掛けてくれたから…】 洗い場の窓から、初夏の香りの風が吹いた。天都の長い髪を棚引かせる。 洗い場の水はまだ、冷たい。
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