出逢い

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「帰ってるの?」 突然天都の部屋のドアが開いた。暗がりに廊下の灯りが差し込み、天都は目が眩む。 「……醜い格好。さっさと降りなさい」 ドアを開けたのは天都の母親だった。天都の母親は天都の乱れた髪や服装を見て、まるでゴキブリを見る様に顔をしかめた。 「お母さ…」 天都が母親を呼び手を差し伸べ様とした姿を横目に、天都の母親はドアを閉めた。天都の部屋を再び静寂と暗闇が襲う。 【天都…】 風流が天都に話し掛けた。 「………一人にして」 そう言った天都の表情は、最早表情とは呼べなかった。何の感情もない瞳。天都の眼に光は灯って居なかった。 風流は仕方なく頭の中の自室に戻った。とても申し訳なさそうに。悔しさに顔が歪む。 「…………………」 天都は殆ど剥ぎ取られた下着と制服を脱いだ。裸になり、机の上のカッターを握る。カチカチと音を立て刃を出せば、それは至極魅惑的なものに思えた。恍惚とした表情でカッターを眺める。 ゆったりとカッターを握る右手を動かし、全身の肌を滑らせる。血塗れになった天都の体。ポタポタと雫がカーペットを汚す。 不意に暗闇に天都の姿が浮かんだ。目の前の鏡だ。 (──醜いな) そっと歩み寄り、鏡に手を添える。 (この血と一緒に、汚れも流れたら良いのに) 天都は自分の頭の中で浮かんだ言葉に、首を傾げた。 (『汚れ』…?) 突然ギシ、とベッドが軋んだ。 【貴女は醜いよね。弟に汚されてるんだからさ】 天都は目を見開き、視線だけをベッドに向ける。そこには、ショートカットだが前髪の長い少女が居た。 【本当に醜いね。小さな子供に自分の身代わりをさせるんだから】 少女が真っ赤な口を大きく開けて笑う。 「………だ、れ……?」 【私?……私は、貴女。良く見て。私は貴女の『罪』よ】 一瞬天都の脳内に色々な記憶が巡った。殴られる感覚、詰られる感覚、犯される感覚、ありとあらゆる『嫌悪』の感覚─。 「いや゛ぁぁあ゛ぁああぁあ゛あ゛っっっ!!!」 絶叫が暗い部屋に響いた。天都は自分の頭を抱え、目を見開いた侭叫ぶ。それを見た少女は満足そうに笑うと、暗闇の中に消えて行った。
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