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僕の世界に色を与え、僕を引っ掻き回す彼女を、いつの間にか夢中で追いかけていた。
それは恋と呼ぶには、あまりに唐突だけれど。
好きなんだ、こんなにも。
「……嬉しい、でも」
聞こえるか聞こえないかの声音で、彼女はかろうじて答えた。
「私は怪盗、あなたは探偵」
そのまま、彼女は姿を消した。
ある意味で、今回は作戦成功だった。
僕は手にしたレーダーを見て、冷たく笑ってみせる。
それは発信機のレーダー。
杯につけた発信機に気付かれない様、告白をした。
思った以上に戸惑った彼女は、そのまま持ち帰ってくれたようだ。
けれど、嘘じゃない。
僕は今回限りで探偵を辞める。
そして、彼女も怪盗を辞める筈だ。
この僕の手で、必ず。
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