プロローグ

7/7
前へ
/10ページ
次へ
「邪なる者――悪魔というわれて忌み嫌われた怨念。セイトたる我に従えば解放する、食らえ、ヴァルエ!」 素早い詠唱が振り返った瞬間に、紡がれた。 目の前には、髑髏が武器を携えた騎士団。 「守護する聖群――」 青年は呆れる事なく、詠唱と古びたカードを広げた。 「風、精の風・レンヴ」 酔った少女を背中に隠して、静かに言った。 竜巻が優しく青年と少女を包み、髑髏の騎士団を回避した。 「携帯してるのは、関心ね。私の愛弟子♪」 ふわりと女性のロングスカートの裾が風にはためく。 「見張りに来ただけだろう?あんたは」 左右の頬を浮かんだまま撫でる女性の両手がぴたりと止まる。 「気付いていたのね。あなた――貴方達は、引き返せないのよ」 悲しげな声が、しっかりと耳に聞こえた。 そして、羽音が聞こえた。 「不可能なのよ、神との賭け事は………」 消える瞬間の狭間風が、静かに聞こえた。 「気分が悪いから聞こえる、ただの幻聴だ。寝てろ」 不安で儚げな表情で少女は青年を見上げていた。 「うん……そう、する――」 すぐにカクンと、少女の首がしおれた。 「お前、今すぐに消えろ。巫女をオレは手放す気も渡す気もないと――姫に言え」 力と意識抜け抜けた身体を横に抱えて立ち上がった。 「お前が姫に従えば、引き返せるんだぞ」 「うるさい」 聞きたくない、聞きたくない――。 禍々しい気配と殺気が出た。 そこからは、怯えるような唸る声と子供のような震えが廊下に響いた。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加