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「邪なる者――悪魔というわれて忌み嫌われた怨念。セイトたる我に従えば解放する、食らえ、ヴァルエ!」
素早い詠唱が振り返った瞬間に、紡がれた。
目の前には、髑髏が武器を携えた騎士団。
「守護する聖群――」
青年は呆れる事なく、詠唱と古びたカードを広げた。
「風、精の風・レンヴ」
酔った少女を背中に隠して、静かに言った。
竜巻が優しく青年と少女を包み、髑髏の騎士団を回避した。
「携帯してるのは、関心ね。私の愛弟子♪」
ふわりと女性のロングスカートの裾が風にはためく。
「見張りに来ただけだろう?あんたは」
左右の頬を浮かんだまま撫でる女性の両手がぴたりと止まる。
「気付いていたのね。あなた――貴方達は、引き返せないのよ」
悲しげな声が、しっかりと耳に聞こえた。
そして、羽音が聞こえた。
「不可能なのよ、神との賭け事は………」
消える瞬間の狭間風が、静かに聞こえた。
「気分が悪いから聞こえる、ただの幻聴だ。寝てろ」
不安で儚げな表情で少女は青年を見上げていた。
「うん……そう、する――」
すぐにカクンと、少女の首がしおれた。
「お前、今すぐに消えろ。巫女をオレは手放す気も渡す気もないと――姫に言え」
力と意識抜け抜けた身体を横に抱えて立ち上がった。
「お前が姫に従えば、引き返せるんだぞ」
「うるさい」
聞きたくない、聞きたくない――。
禍々しい気配と殺気が出た。
そこからは、怯えるような唸る声と子供のような震えが廊下に響いた。
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