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あの当時の事は何一つ思い出したくない事だ。
あの頃の記憶はなくしてしまいたい。
あんなに苦しくて切なくて、絶望の青春時代なんて消えてなくなれば良い。
しかも、駿君との思い出も出来れば忘れていたかった。
やっと色褪せて思い出すことも少なくなっていたあの当時が凄い勢いで巻き戻されて、目眩のような感覚に囚われる。
「…テニス大好きだね。」
私は彼の言葉には直接応えず、軽く話を遮った。
彼はそれ以上質問はしてこなかったし、私も何も言わなかった。
そうして私達は何事もなく彼の自宅に入り、私は美月ちゃんと家庭教師の話をして駿君のお母さんとご挨拶をして…そして駿君とは特にそれ以上話すことはなく当初の目的を完璧に果たした私はサッサと桜木邸を後にした。
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