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「…………チッ」
今日何度目かわからない舌打ちをした瞬間、両隣から一斉に視線を感じた。
気がついたけれど、俺はあえて素知らぬふりでパソコンの画面に向き直る。
「今度は何?」
呆れたように聞いてきたのは、2つ上の先輩の入江貴之さんだ。
男の俺が憧れるくらいスラッとした体つきに整った顔立ち、加えて仕事も出来るとくれば文句のつけようがない先輩。
穏和でいつもヘラヘラしている彼には、入社以来お世話になっている。
そんな彼すらも、ほとほと呆れるほど俺は舌打ちをしていたということか。
……そんなにした覚えはないが。
その反対側で苦笑を浮かべるのは、1つ下の後輩の早瀬優斗。
茶髪にピアスなんて外見が気にならなくなるくらい仕事は一生懸命で、覚えも早い。
可愛い弟分……なのに苦笑いなのはやっぱり回数が多いせいか?
「んな舌打ちばっかしてると幸せ逃げるぞ?」
「この程度で逃げる幸せなんて大したことないんで大丈夫です」
「宇城……」
そんな哀れなものでも見るような目で見ないで欲しい。
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