傘をささない君へ

Day.1

もう見慣れた光景であろう同僚は、一人はこちらの会話は聞こえませんとばかりにパソコン画面に没頭し、一人はチラチラ横目で俺がキレないかハラハラしているようだった。

「入江さん。なんか宇城さんが刺々しいんですけど」

「気にするな。巻き込まれるぞ」

「あ、それは嫌ですね」

俺の背後にひょっこり顔を出して入江さんに話し掛けていた早瀬も、入江さんにならって見ざる聞かざる言わざるを決め込むことにしたようだ。

誰か仲裁に入ってくれた方が収拾がつく気がするんだが、揃って拒否ときた。

誰か止めてくれる勇者はいないのかと考えるが、今日は日曜日。

しかも世間はお盆休み真っ只中。

会社なんかにいる方が間違ってる。