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僕専属の護衛騎士を部屋の外で待機させ、
そっと
そっと
扉を開きます
僕はするりと部屋の中へ身体を滑り込ませました。
そして
足音と気配を殺して、姫君に近付くのです。
あ、
扉の蝶番からの音を鳴らさないように、あなたは押さえておいて欲しいのです。
僕の悪戯に付き合って頂きますよ?
もちろん。
あなたも息を潜めて下さいね?
僕らに背を向けている姫君。
カリカリと羽ペンを動かしてます。
あなたにも、羽先が猫の尻尾のように軽やかに動いているのが見えるでしょう?
僕の口端に悪戯な笑みが浮かびました。
注意深く近づいて、姫君のお腹に巻き付ける腕と、首筋に寄せる頬が同時に着くように構えます。
ふわっと
姫君に覆い被さりました。
姫君は、びっくりし過ぎて固まり、声も出すことも出来なかったのです。
悪戯は成功したのに、僕は悲しくなりました
なぜなら
姫君はある事情で、つい最近まで声を出すことが許されなかったからです。
愛おしいその手足には、その時の古傷が
大分薄まったけれども残ってます。
彼女は、それを酷く恥ずかしがりますが
姫君の愛情の深さを知る事が出来た証なので、僕は愛おしくて仕方ないのです。
「悪戯が過ぎますわ王子様。
お客様はどうされましたの?」
姫君の声が聞けて、僕は詰めていた息を吐き出しました。
首筋に息が掛かり、姫君の擽ったそうに身を捩る姿に
僕の胸がざわめきました
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