高土 01

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生温かいものが顔にかかり、それを手で拭う。 手にはべったりと血がついていた。 「似合うぜ、テメーに血は」 「・・・高、杉・・・」 土方の目は攘夷浪士の高杉晋助を映している。 目の前の男に勝てないだろうことを悟った。 ああ、俺ァここで死ぬのか。 それならそれでもいいかと思う。 近藤さん、ごめんな。 これでも少しは役に立てたんじゃないだろうか。高杉は殺せなかったけれど、他は全員殺した。真選組の敵はこの男以外は殺したから、後はもうどうにかなるはずだ。 この男には勝てないだろうけれど、でも、もう近藤や真選組に手が及ぶことはないだろう。 それならいい。 もう、いい。 「逃げねェのかよ」 「俺が?誰が逃げるか」 この男からは逃げられそうにない。逃げたって無駄だ。 ああ、頭がクラクラしてきやがった。 血が足りない。 そういえば、と今更気づく。 さっき俺の目の前の男を斬ったのは高杉だ。 何で? 仲間じゃねェのか? 「どうしたよ」 「別に、何でもねェよ」 聞いたって仕方ねェな。 俺はどっちにしたって殺されるんだから。 目の前の隻眼の男に斬られておしまいだ。 近藤さん、やっぱりアンタより先に俺は逝くよ。 アンタ怒ったけど、俺はアンタより後に逝く気はなかったし、どうせ死ぬならアンタのために死にたかったから、予定通りって言やァこれは予定通りだ。 だからいい。 ふっと穏やかに笑む土方に高杉が気づき、ピクリと眉を動かす。 「テメー、何うれしそうな顔してやがんだ」 「さァ、何でだろうなァ?」 楽しげに笑みを浮かべていた高杉の顔から笑みが消える。 終わりだな。 プツン、と土方の意識は途切れた。      
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