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自分の隣で小さく身じろいだ土方の髪を、高杉がそっと梳く。
『何で、殺さなかったんだ』
土方は死を覚悟していた。だから笑った。
ああ、いいなァ、テメーは。
知れば知るほど放したくなくなる。もうどこにも返したくないと思ってしまう。このままここに閉じ込めて、他の誰にも見せないでいたら、きっと大騒ぎだ。
本当に閉じ込めてやろうか?
高杉は土方を愛しげに眺めながら、その手を土方の頬へと移した。
「お前しかいねェよ」
こんな感情を抱くのは土方にだけだ。
誰にも渡したくないと、ここに閉じ込めてしまいたいと本気で考えてしまう。
「土方」
高杉の声に反応しない土方は、完全に眠ってしまっているようだ。高杉は苦笑いを浮かべる。
やりすぎたな。
昨日は珍しく土方の許しを得ることができたので、ここぞとばかりにひどくしてしまった。
土方を抱いたのは、まだ片手で数えられるほどだ。
無理やりやっちまえばいいのになァ?
相手が土方じゃなければ、抱きたい時に抱いただろう。相手の意思なんて関係なしに。
けれど、土方は特別だ。
身体が目当てなわけじゃない。土方の存在そのものを手に入れたいのだ。
だから無理強いはできるだけしないようにしている。それを土方がわかっているかどうかはしらないが、高杉にしてみると相当な我慢をしているのだ。
高杉は土方の髪に手を移動させ、自分の指の間に艶やかな黒髪を通しては弄る。
「仕事行くんじゃねェのかよ」
別に高杉としてはこのまま自分と一日を過ごしてもらってもいっこうに構わないどころか大歓迎なのだが、このまま起こさないでいようもんなら土方が怒ってしまい、ここにしばらく来なくなってしまうかもしれない。
まァ、もしマジで俺に会いに来なくなったら襲いに行くけどな。
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