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「土方」
グ、と土方の肩を掴んで揺さぶると、うっすらと土方の瞼が上がる。
「・・・何」
「仕事、どうすんだ」
昨夜高杉は土方を帰さなかった。次の日、絶対に起こすならいてやってもいいと土方が了承したからだ。
「おい、寝るなって」
再び瞼を落とした土方が眠りに落ちようとするので、高杉は苦笑しながら土方の身体を揺さぶった。
「土方」
「わかってる」
「何がわかってんだ」
「何でも」
絶対コイツまだ夢の中だな。
高杉はどうしたもんかと思った。
別に無理やり起こしてもいいのだが、土方に仕事に行ってほしいわけではない。
「おい、土方」
「うん」
「俺は起こしたぞ。わかってんな?」
「ああ」
「もう仕事行くのはやめんのか?」
「やめる」
土方は今は寝ぼけている。
高杉はわかっていて尋ねた。返ってくる答えはいつもと違い、嫌だとかそんな否定する言葉ではないので心地よい。
「なら俺とずっといるか?」
「ん、いる」
「本当かよ」
「ああ」
「それじゃもう離さないぜ」
「・・・ん」
「テメー、本当は仕事なんてどうでもよくて、俺とずっと一緒にいてェんだろ?」
「ああ、いたい、ずっと」
一緒に、と空気に溶け込むような声とともに、土方の目が唐突に開いた。
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