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「臨也が拐われた」
単刀直入にそう言えば、電話番号の向こうで一瞬息を飲む気配がした。
「どういうこと」
「そのまんまの意味だ」
そう言えば今度はため息。「君がついていながら」
「すまねえ」
謝れば、新羅がどうしたの君、と驚いたように言う。「何か変なもんでも食べた?」
「うるせぇ。で、臨也がガキになったことを知ってるやつはいるのか」
「…それ、犯人は『折原臨也』を狙ったということ?最近流行りの人拐いとかじゃないの」
そう言われて、静雄は池袋で出回っている噂を思い出す。不法滞在の外国人や身寄りのない者を拐う集団がいるというものだ。だが、こんなに白昼堂々と犯行に及ぶだろうか?しかもこんなに人目につくような場所で。静雄は頭を振った。考えるのは苦手だ。
「わからねえ。そうかもしれねえがそうじゃねえかもしれねえ」
「じゃあとりあえず、セルティにそっちに向かってもらうね。僕はこれから彼の秘書に電話をかけてみるよ」
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