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「ねえねえシズちゃん」
臨也が服の裾を引っ張る。「テレビ飽きたよ。遊ぼうよ」
「俺は忙しいんだ」
静雄はうんざりしながら手を払った。テレビをつけてから半時間も経っていない。
「ケチ」
そう言って臨也が黙る。ちらりと目をやると、子供は、口を尖らせたまま、ベッドにダイブした。そのまま、うつ伏せになったまま足をぱたぱたと動かしている。
放っておいても大丈夫だろうと考え、静雄はクロスワードパズルに目を戻した。「シズちゃんってさ」
ヒントを一つ解いたところで、ベッドから声が飛んでくる。
「俺のこと殺したいぐらい嫌いなの?」
静雄はうっかり肯定しかけて口をつぐんだ。相手は臨也とは言え、今はただの子供だ。
「何でそう思うんだ?」
逆に聞くと、臨也は身を起こし、床に座っている静雄に目を向け笑った。
「新羅って人と話してたじゃない」
それは、静雄もよく知る表情だった。
「でもシズちゃんはきっと弱いものには手を出せない優しい人なんだね。だから、新羅って人はシズちゃんに預けたんだ」
(こいつはガキの頃からこんなに頭が回るやつだったのか)
静雄は眉をしかめた。そして何と言おうか考えを巡らせる。が、臨也は急につまらなそうな顔になった。ぱたぱたと足を動かす。
「ねえ、遊ぼうよ」
この会話にも飽きたらしい。静雄はため息をついて、手を振った。
「後でな」
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