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ふと気がつくと時計は12時を差していた。静雄は、寝転んで静雄の手元を覗きこんでいる臨也に言った。
「おい、昼食べに行くか」臨也が顔をあげ、嬉しそうに頷く。
「うん。何食べに行くの」「寿司だ。好きか」
「うん大好き」
(家で食べてもいいんだが)
と、出かける用意をしながら静雄は考えた。
(まあずっと家に閉じ込めておくのも可哀想だしな)「ほら、行くぞ」
臨也は寿司、寿司と節をつけて歌いながら玄関へ向かう。
静雄は財布をポケットに突っ込み、後を追った。
「おうシズオ」
扉を開けると、サイモンが満面の笑みで出迎えた。臨也に目を向け、首を傾げる。
「オー、シズオの息子か?」
「違ぇよ、知り合いのガキだ」
静雄は前もって考えていた言葉を吐く。と、座敷から聞き覚えのある声が飛ぶ 。
「あれ、静雄じゃん」
声をあげたのは狩沢で、
遊馬崎、渡草、そして同窓生の門田もいた。
「よう静雄」
「おう」
と返事を返してから、四人の視線が臨也に向けられていることに気付き、慌てて付け加える。
「知り合いの息子だ」
「へえ、可愛いなあ」
狩沢はにこにこと臨也を手招きした。臨也は戸惑い顔で静雄を見上げ、静雄が頷いたのを見て四人組に近づいていく。
「ボク、名前は?」
「タロウだ」
静雄が急いで答える。
臨也はちらりと静雄を見たが、黙って狩沢の隣に座った。
「タロウ君何食べたい?」「大トロ」
その答えに、静雄は顔をひきつらせ、狩沢が目を丸くした。
「ねえ、この子、お金持ちの子?」
(知るかそんなこと)
「さあ…どうなんだろうな」
静雄はサイモンに、寿司の詰め合わせを二人前、手早く注文した。
大トロばかり食われては敵わない。
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