☆☆☆

7/23
前へ
/23ページ
次へ
運ばれてきた寿司を食べ終えた後、静雄は湯飲みを片手に寛いでいた。 お昼時だからだろう、先ほどからサラリーマンやら学生やら主婦やら、色々な人が入ってきては出て行く。ロシア寿司の名物となった、サイモンの威勢のいい片言の日本語が、店内を賑わせる。 「平和だな」 静雄はぼそりと呟いた。門田がそうだなあ、と答える。一見、何の騒動も喧嘩もない穏やかな時間。 まあそれを壊すのは池袋では大抵自分だとわかっているのだが、それも静雄の本意ではないのだ。静雄の本心としてはこうした時間こそ望んでいる。だからこそ、何もない時間を過ごせるならたまの休日もいいな、などと考える。 (まあ…あの男が今はあれだしな…) 静雄は正面に目をやる。四人組ーというより狩沢が臨也を気に入り、ずっと相手をしている。 (というか、このまま戻らなくてもいいんじゃねえか?) その方が池袋の平和の為ではないかと考えていると、門田が口を開いた。 「仕事はいいのか」 「今日は休みだ」 「そうか」 静雄はなんとなく、狩沢とあっち向いてほいをしている臨也を眺めていた。門田も同じように二人を見ていたらしい。 「…なあ、静雄」 静雄は、門田に目を向けた。 「なんだ」 「あいつ、臨也なんだろ」「え?」 ストレートにたずねられ、静雄は言葉に詰まった。それは肯定したと同じことだった。 「やっぱり」 と門田は笑う。 「何でわかった?」 と聞くと、 「まああいつともなんだかんだ、付き合い長いからな」 と苦笑した。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

70人が本棚に入れています
本棚に追加