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運ばれてきた寿司を食べ終えた後、静雄は湯飲みを片手に寛いでいた。
お昼時だからだろう、先ほどからサラリーマンやら学生やら主婦やら、色々な人が入ってきては出て行く。ロシア寿司の名物となった、サイモンの威勢のいい片言の日本語が、店内を賑わせる。
「平和だな」
静雄はぼそりと呟いた。門田がそうだなあ、と答える。一見、何の騒動も喧嘩もない穏やかな時間。
まあそれを壊すのは池袋では大抵自分だとわかっているのだが、それも静雄の本意ではないのだ。静雄の本心としてはこうした時間こそ望んでいる。だからこそ、何もない時間を過ごせるならたまの休日もいいな、などと考える。
(まあ…あの男が今はあれだしな…)
静雄は正面に目をやる。四人組ーというより狩沢が臨也を気に入り、ずっと相手をしている。
(というか、このまま戻らなくてもいいんじゃねえか?)
その方が池袋の平和の為ではないかと考えていると、門田が口を開いた。
「仕事はいいのか」
「今日は休みだ」
「そうか」
静雄はなんとなく、狩沢とあっち向いてほいをしている臨也を眺めていた。門田も同じように二人を見ていたらしい。
「…なあ、静雄」
静雄は、門田に目を向けた。
「なんだ」
「あいつ、臨也なんだろ」「え?」
ストレートにたずねられ、静雄は言葉に詰まった。それは肯定したと同じことだった。
「やっぱり」
と門田は笑う。
「何でわかった?」
と聞くと、
「まああいつともなんだかんだ、付き合い長いからな」
と苦笑した。
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