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朝が来ても、平隊士らの態度は何ら変わらなかった。
あの後きっと、沖田らにキツく稽古させられただろう痕が、目に見えて分かっても、彼等は態度を変えようとはしない。
(当然…かな)
牡丹は苦笑い思う。
生身でありながらも、半分は人では無い自分。
それを受け入れようなどと…きっと並みの人間なら、無理だ。
分かっている。
分かっているからこそ、近藤と白蛇に無理を言ったのだ。
これから自分を認めて欲しくて。
自分を知って欲しくて。
「気にすること無い」
山崎が優しく耳元で囁くも、牡丹は笑顔で首を横に振った。
「気にしないといけないんだ。気にしないと、私の居場所は此処じゃなくなるから…」
牡丹は言うと、昨夜白蛇から授かった物を握りしめ、
「ちょっと土方さんの所へ」
行ってくる。言い残し、山崎の側を離れた。
¨気にしなければ、己の居場所を確保出来ない。¨
昨夜牡丹は言った。
¨入隊する¨と。
気味悪がられて、味方と言えば、やっと恋仲になれた自分や、組長格…それだけでも十分だろうに。それでも納得出来ないのは、恥じない己の信念か。
つまり皆に認めて貰いたいのだ、牡丹は。察しの良い山崎は、離れていく牡丹の背中にほくそ笑んだ。
「欲張りやな」
これは呆れているのではなく、また反対で。
そうまでして¨自分¨を持とう。¨自分¨を確固たるものにしよう。
この組で。
大事な人の側で。
そんな牡丹の意志が見えて、嬉しい。とすら思える。
自分もまた、この組が、居場所が、何より大切だから。
大切なものを共有…共感出来るのが、こんなにも幸せだから。
「土方さん、おはようございます。」
牡丹はいつになく淑やかに、土方に語りかけ襖に手をかけた。
土方は何も言わず、ただ、
「本気か?」
と、振り向きもせずそれだけを問う。
「冗談で言って良い事と、悪い事くらいは分かってますよ」
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