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「これは……………………………転けた」
「散々溜めといてそれ!?」
白蛇の答えに拍子抜けする牡丹の突っ込み。
「牡丹を宜しく頼むな」
白蛇はそれだけ言い残して、何を急くのか颯爽と風に、消えた。
理由は…分かっていた。
白蛇の言った事は…『嘘だ』と。どす黒くなった白蛇の足からは、微々たるものだったが不浄の気配がした。
「……先生」
上手く牡丹を誤魔化せたろうか。
「悟い子だからな…」
無理だろう。白蛇が薄く儚く笑む頃。
(先生…不浄に飲まれかけてる?まさかね!)
絶対に有り得ない事は無い。時として…
それが。今、白蛇の置かれている現実。
「牡丹には会えたし。受け入れて想ってくれている人間もいる。」
なら。
なら…自分はもう、いいんではないだろうか。
またザワザワ黒い影が、白を黒に染めていく。
…牡丹の考えなど、甘かったと。後になって思い知らされる。
「ほれ、何や?」
不意に山崎が指差す。
「明日になったら、分かります~」
呑気だったんだ。
牡丹という人間は。
けれど、その反対。白蛇は悔いが残る。
白蛇が望んでいる事に。それを成し遂げる為に牡丹が必要だという事に。
どうか…
どうか……
「1日でも早く……」
(消えたい?一人は…嫌だ…)
「ごめんな。もうすぐ逝くから。」
何百年の月日を重ねて。呟く。
「牡丹もごめんなあ…けど一人ではないのを忘れるなよ」
…黒い影は、もう身体半分まできている…
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