第七章『花金鳳花』

6/6
前へ
/105ページ
次へ
朝が来ても、平隊士らの態度は何ら変わらなかった。 あの後きっと、沖田らにキツく稽古させられただろう痕が、目に見えて分かっても、彼等は態度を変えようとはしない。 (当然…かな) 牡丹は苦笑い思う。 生身でありながらも、半分は人では無い自分。 それを受け入れようなどと…きっと並みの人間なら、無理だ。 分かっている。 分かっているからこそ、近藤と白蛇に無理を言ったのだ。 これから自分を認めて欲しくて。 自分を知って欲しくて。 「気にすること無い」 山崎が優しく耳元で囁くも、牡丹は笑顔で首を横に振った。 「気にしないといけないんだ。気にしないと、私の居場所は此処じゃなくなるから…」 牡丹は言うと、昨夜白蛇から授かった物を握りしめ、 「ちょっと土方さんの所へ」 行ってくる。言い残し、山崎の側を離れた。 ¨気にしなければ、己の居場所を確保出来ない。¨ 昨夜牡丹は言った。 ¨入隊する¨と。 気味悪がられて、味方と言えば、やっと恋仲になれた自分や、組長格…それだけでも十分だろうに。それでも納得出来ないのは、恥じない己の信念か。 つまり皆に認めて貰いたいのだ、牡丹は。察しの良い山崎は、離れていく牡丹の背中にほくそ笑んだ。 「欲張りやな」 これは呆れているのではなく、また反対で。 そうまでして¨自分¨を持とう。¨自分¨を確固たるものにしよう。 この組で。 大事な人の側で。 そんな牡丹の意志が見えて、嬉しい。とすら思える。 自分もまた、この組が、居場所が、何より大切だから。 大切なものを共有…共感出来るのが、こんなにも幸せだから。 「土方さん、おはようございます。」 牡丹はいつになく淑やかに、土方に語りかけ襖に手をかけた。 土方は何も言わず、ただ、 「本気か?」 と、振り向きもせずそれだけを問う。 「冗談で言って良い事と、悪い事くらいは分かってますよ」
/105ページ

最初のコメントを投稿しよう!

376人が本棚に入れています
本棚に追加