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いつも明るく皆の士気を上げる近藤が、今日は一度も見掛けない。
牡丹はそれとを不思議に思いながら、土方はきっと自分の事を、話に言っている筈だ。それは…「近藤さんに付き合ってやってくれ」その言葉と関係があるのだろうか。
牡丹はただ、雲の無い青い青い空を見ながら、物思いに耽っていた。
と、
「松葉さん?」
一人の隊士が声を掛けてきた。
聞き覚えの無い声。きっと、どこかの隊に配属されている者だろう。
そんな牡丹を尻目に、その隊士は、
「松葉さんて、実は凄く綺麗な方だったんですね」
それは…面をせず、紅い瞳をしながらも見えていない。‘この’顔を見えていないからだろう。
今、この隊士が見ているのは、牡丹の…横顔だけだから。
牡丹は躊躇わなかった訳では無い。
離れて行ってしまうかもしれない。「綺麗だ」と、もう二度とは聞けないかもしれない。
けれど…向き合わなければ。受け入れなければ、その心は何時まで経っても平行線だから。
牡丹は少し躊躇いがちに、けれど知らずとも言ってくれた隊士に、真正面に向き直り笑んだ。
「ありがとう」と。
けれど…当然の反応だろう。牡丹の顔を正面に見て、隊士は顔をひきつらせながら後退り。
ああ。やっぱり。
当然の反応だ。そう予想していても、痛む…心。
切ない。やるせない。どうして、何故。自分なのか…
そんな感情は、牡丹の顔で見て分かるけれど。隊士は目を反らし、走り去ってしまった。
「…気味が悪い」
小さく言い残して。
分かっている。
気味悪がられる事も…「不吉」だと、離れて行ってしまう人間も居るだろう。と。
(心に嘘は付かない。私は私。でも…向き合うのは、自分だけじゃない。)
でも…
「やっぱり少し先が思いやられるな」
物悲しげに、儚い笑みを浮かべる牡丹。
と、
「おぉっ!?牡丹本当に別嬪さんだな~」
「面をしてても、可愛かったよ?」
それは…きっとまた、横顔しか見ていない。原田と藤堂の声。
(…よりによって今、か…なんて間が悪い。)
どうしてこう、何事も重なるのだろう。
思いながらも、牡丹は二人に有りの侭の素顔を晒した。
その顔に、驚きを露にする原田と藤堂。
(ああ、やっぱり。)
牡丹は困ったような顔をしながらも、笑って見せた。
それは…きっと強がった笑顔ではなく。現実を受け止めよう。そう決めた牡丹の笑顔…
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