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空き地でドッヂボールをしている――地面に線が引いておらず、ドッヂボールサイズのボールを投げ合っているだけなので本当にドッヂボールなのかは定かでないが――子供たちを横目に私は勝義さんの車に揺られながらアパートを後にする。
私は後ろを振り向き、今まで自分が住んでいたアパートを見る。二階の通路ではおばさんが柵越しに空き地の子供、恐らくは七菜ちゃんを泣きながら見つめていた。
「もう大丈夫か」
「ん?なんか言うた?」
聞こえないような独り言を呟いたつもりだったが、勝義さんが反応する。私は振り向きなおして「なんでもありません」と一言。
そして車は勝義さんの家へと向かっていく。
「そういえば、白マントってどうなりました?」
「ああ、あれか」
勝義さんは余り思い出したく無い様に調子の悪い感じで喋る。
「埋めたよ。壷の中をセメントで固めて、近くの住職にお願いして祠の下に埋めてもろうた。恐らくもう出てくる事はないんちゃうか。他のパーツも同じ様に固めて色んな所に埋めたからの」
そうですか、と私は素っ気無い言葉を漏らす。若干罰当たりな気もするが、住職さんが了承しているという事は大丈夫なのだろう。そこら辺の事はよく判らないし、解ろうと思っていないのでどうでもいい。
要は《白マントはもう二度と出てこない》ということが重要だ。
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