7.

8/10
前へ
/118ページ
次へ
 空き地でドッヂボールをしている――地面に線が引いておらず、ドッヂボールサイズのボールを投げ合っているだけなので本当にドッヂボールなのかは定かでないが――子供たちを横目に私は勝義さんの車に揺られながらアパートを後にする。  私は後ろを振り向き、今まで自分が住んでいたアパートを見る。二階の通路ではおばさんが柵越しに空き地の子供、恐らくは七菜ちゃんを泣きながら見つめていた。 「もう大丈夫か」 「ん?なんか言うた?」  聞こえないような独り言を呟いたつもりだったが、勝義さんが反応する。私は振り向きなおして「なんでもありません」と一言。  そして車は勝義さんの家へと向かっていく。 「そういえば、白マントってどうなりました?」 「ああ、あれか」  勝義さんは余り思い出したく無い様に調子の悪い感じで喋る。 「埋めたよ。壷の中をセメントで固めて、近くの住職にお願いして祠の下に埋めてもろうた。恐らくもう出てくる事はないんちゃうか。他のパーツも同じ様に固めて色んな所に埋めたからの」  そうですか、と私は素っ気無い言葉を漏らす。若干罰当たりな気もするが、住職さんが了承しているという事は大丈夫なのだろう。そこら辺の事はよく判らないし、解ろうと思っていないのでどうでもいい。  要は《白マントはもう二度と出てこない》ということが重要だ。
/118ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加