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「ありがとう」
とだけ言ってリリアはシチューに視線を戻した。さっきまでとは違い。少しだけ表情が柔らかかったのは気のせいではないだろう。
何か勢いで泊める事にしちまったが、これでしばらく、俺の床生活が決定したのである。
まさか、女の子を床に寝させて、男の俺がベッドで悠々と寝る訳にもいかないだろう。俺は生まれて初めて自分が男である事を呪ったかもしれない。ああ、顔も覚えていない父と母よ。何故、俺を女にしてくれなかった……。
「おかわり」
まてよ? 何も俺が床で寝る必要はないんじゃないか? 家の主である俺にだって当然ベッドで寝る権利があるはずだ。こうなったら一緒に……
「おかわり!」
「はい」
今度は鍋ごと渡してやった。リリアはなんのためらいもせず、淡々とシチューを口へと運ぶ。
「はぁ……」
そんなこんなで、この不思議少女との共同生活が始まった訳である。色々と悩む事はあるが悩んでいる反面、少しだけワクワクしている自分が居た。
「ごちそうさまでした」
さて、これから先一体どうなる事やら……。
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