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世界四大陸の一つ。アルケツィアの辺境にあるミコシの森。そこで俺は狩りをしながら暮らしている。その日は、空気が凍りそうなくらい寒い雪の日だった。
「あー最悪だ」
独り言を漏らしてしまう程、今日は最悪の一日と言えた。
朝から散々探してまわって、結局一匹も見つけられなかった。動物は冬眠シーズン真っ只中なんだ。猟犬でもいなきゃ見つけるのは至難の技。狩人になって日も浅い俺には不可能に近かった。
もうすっかり夜。重い足取りで帰路についた俺はショボくれて視線は常に足元を見ていた。だから気付いたのかもしれない。こんな森の中だ。住んでる人間なんて俺以外居る訳ない。しかしどういう事か、地面に積もった雪に真新しい足跡が残っていた。
森から一番近いトルシエ街の奴らは此処に来る訳がないし、恐らく土地勘のない旅人か何かが迷って入ってしまったのだろう。
足跡を見るかぎりまだ遠くには行ってないはずだ。
俺は雪の中、足跡だけを頼りに走る。足跡の大きさを見て気づいたが恐らく女か子供だ。その足跡は出口の反対へと歩いていた。樹海とも言われてるミコシの森で迷ったら命が危ない。
「お、居た!」
白いワンピースを着て、薄い青色のセミロングの髪を揺らしながら女の子がゆっくりと歩いている。こんな寒い日にそんな薄着でなに考えてんだ。
「おーい!」
大声で叫ぶ。俺の声は静寂なミコシの森に吸い込まれるように響き渡り、少女はピタリと足を止めた。
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