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「…………」
振り返った少女の顔を見て、俺は正直ドキッとした。少し幼いが、整った顔。透き通った青い瞳。俺が少女に見とれてると、少女は耳を澄まさなければ聞こえないくらい小さな声で呟いた。
「……見つけた」
少女はゆっくりと俺に歩みよると、予想も出来ない行動を起こした。
「ち、ちょ……!」
少女は何を考えているのか、
いきなり俺に抱きついてきた。
「な、何して……」
慌てて少女を引き離そうとしたが、少女はじっとしてと言って、更に力を強くする。なにがなんだか解らない。
「……終わった」
この状態で3分くらいだろうか、少女はそう言って、やっと俺から離れた。
「え……あ、おい!」
離れた瞬間、少女は糸の切れた人形のように力なく崩れ、俺はとっさに受け止めた。
「大丈夫か!?」
返事がない。
慌てるな。こんな時こそ冷静になれ。脈を確認するんだ。
。
「ちょっと失礼」
少女の首に手を当てる。少女はトクン……トクンと一定のリズムで脈打っていた。
――よし。息もしてるし、心拍数も正常。どうやら眠っているだけの様だ。
とりあえず家に連れていこう。こんな雪の中置き去りにはできない。無許可でおんぶする事は目を瞑ってくれ。まさか引きずって行く訳にもいかないしな。
着ていた茶色いコートを脱いで少女に羽織らせてから、俺はおんぶした。当然の事だが、コートを脱いだら物凄く寒い。よくワンピース一枚で出歩けたもんだ。
「そのコート暖かそうでいいよなぁ……」
一言ぼやいて家へと歩き出す。背中で感じる少女の体温が妙に心地よく。俺は満更でもない気分になった。
それから直ぐ。木造一階建ての我が家に着き少女をベッドに寝かせた後、俺はしばらく様子を見ていたのだが、段々と睡魔に襲われ気がついたら夢の中にいた。
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