913人が本棚に入れています
本棚に追加
運転席を開けて
寒い外へ滑り出る。
「一宮」
「お疲れさん、緋路さん」
コンビニの袋ひとつ提げて
一宮が車の傍らに立ってた。
「…買い物…行ってたの?」
「ん?うん」
カサリと、
ビニールが音を立てた。
「あの、さ…」
いつもの無表情な一宮からは
何の感情も読みとれなくて。
でも、今の状況は彼にとって
面白いはずはなかった。
「蒼くん…拾って…さ」
何の言い訳も準備してなくて
何とも言いようのないこの状況。
「んふふ…」
シンと凍る冬の空気が震えた。
可笑しそうに、笑う一宮。
「拾ったんだ…?」
「……」
「で、持ち主に届けに来たの?」
持ち主…?
誰が?誰の?
蒼くんは…
「お前のじゃない…っ」
俺は彼が望むから、此処へ。
彼が、望むから…。
.
最初のコメントを投稿しよう!