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運転席を開けて 寒い外へ滑り出る。 「一宮」 「お疲れさん、緋路さん」 コンビニの袋ひとつ提げて 一宮が車の傍らに立ってた。 「…買い物…行ってたの?」 「ん?うん」 カサリと、 ビニールが音を立てた。 「あの、さ…」 いつもの無表情な一宮からは 何の感情も読みとれなくて。 でも、今の状況は彼にとって 面白いはずはなかった。 「蒼くん…拾って…さ」 何の言い訳も準備してなくて 何とも言いようのないこの状況。 「んふふ…」 シンと凍る冬の空気が震えた。 可笑しそうに、笑う一宮。 「拾ったんだ…?」 「……」 「で、持ち主に届けに来たの?」 持ち主…? 誰が?誰の? 蒼くんは… 「お前のじゃない…っ」 俺は彼が望むから、此処へ。 彼が、望むから…。 .
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