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「ふ…くっくっ」
「……」
笑う、一宮。
丸い手が口を押さえて。
「何が可笑しいんだよ」
ぴたりと、笑うのを止めた。
「……何も」
冷えた声。
「…一宮?」
「何も可笑しくない」
「い…」
胸ぐら掴まれて一瞬息が止まる。
「触るな」
「……」
「あの人に…触らないで」
「一宮…」
掴みかかった手が緩んで
ずるりと外された。
「ごめん…乱暴なことして」
「いや…」
「連れて来てくれたんでしょ?」
蒼…って、呟いた。
「…うん」
「ありがとう…面倒かけたね」
「いや…俺が好きでやってるから」
それがいいのかさえ、
今となっては悩むところだ。
「…うん」
だって、一宮はこんなにも
悲しい目をするから。
「一宮」
「…はい」
「連れてきたのは俺の好意だけど」
華奢な肩が揺れる。
すまん。
傷つけるつもりはなかったんだ。
「望んだのは…蒼くん自身だよ」
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