913人が本棚に入れています
本棚に追加
コツコツ、と窓が鳴った。
「あれ?蒼くん」
ガチャリとドアが開いて
彼が悲しそうな顔でぽつりと
「船だせねぇって」
「風強いからね」
「ひろくんまだ居たんだね」
「うん…荷物後ろ入れな?」
「…うん」
ほどなくして、彼が横に座った。
「残念だったね…」
「はろー注意報だって」
「海だと余計、風が強いから」
「天気いーのに」
横の人はぶーだれてる。
その尖らせた唇ツマみたいなぁ。
「どうする?帰る?」
「んぅ~」
「明日も撮影なんでしょ?」
「…うん」
彼はしばらく考えて、
「なり…の家でもい?」
遠慮がちに訊いてきた。
「いーけど…」
複雑。
也って呼ぶ彼にも慣れない。
ちょっと知らない蒼くんだから。
.
最初のコメントを投稿しよう!