プロローグ

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 それより二年の月日が流れ。  勇者機兵隊本部である人工惑星、エクセリオン崩壊を境に、一時は壊滅状態にあった勇者機兵隊も、法崎つかさ(ほうさき つかさ)という新たな仲間を加え、僅か一年足らずで復旧を果たし、組織としての本来の機能を取り戻していた。  しかし、何もかもが上手く行っていたわけではない。勇者機兵隊開発部・主任技術者である女性、レオナ=ラージスが取り組まなければならない、ただ一つの重要事項が難航していた。それは隊長、神条正人(しんじょう まさと)専用の機兵、隊の象徴とも言うべき、勇者機兵の開発であった。  勇者機兵キャリバー。それはカオスガーデンとの決戦の折、その全ての力を開放した代償として、修復不能に至るまでの致命的なダメージを被っていた。 主任技術者であるレオナですら、新しく作り直すという選択肢を選ばざるを得ない程である。  しかし問題は、作り直すことそのものではなかった。機兵ではなく、操縦者である正人本人に関する事態だったのである。  キャリバーの全能力開放、エターナルフォームの発動による弊害とは、人として知覚できる領域を遥かに超えた感覚の獲得にあった。  端的に言ってしまえば、正人自身の感覚が従来の機兵では追従できないほどに鋭く進化してしまったため、彼の乗る新たなる勇者機兵には、従来のキャリバーを遥かに凌駕したスペックを持つことが絶対条件となってしまったのである。  常に最善のものを提供してきたレオナにとってその事実は無理難題と言わざるを得ず、手探りのままに調整を続けることを強いられた勇者機兵は、その理想に到達できるほどのも性能を未だ獲得してはいなかったのであった。  希望に満ちながらも一抹の不安を抱えたまま、物語は幕を開ける。
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