剣の勇者

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 格納庫に辿り着いたガーランドは、固定されていた自らの機体を見上げた。  強襲機兵ファントムサイザー。勇者機兵隊の戦力に対抗するため、彼自身が研究を重ね、完成させた機兵であった。  全身は黒。甲冑をイメージした外観に加え、背中には稼動時に展開するフィン状のスラスターが備え付けられ、折り畳まれた羽のように二基一対で取り付けられている。  その頭部には三本の角が備え付けられており、Y字型のゴーグルにモノアイが光っていた。それは、勇者機兵隊のように人間の顔を模したものを使うことはしない、という対抗心に起因したものでもあった。  動力炉には、ガーランド自らが開発した時流駆動の永久動力機関、クロノスフィアが搭載されている。これにより出力は、勇者機兵隊のクリスリアクターに勝るとも劣らないほどのものとなった。もっとも持久力には乏しく、総合的な性能に関して言えば、劣っていると言わざるを得ないのだが。 「さて。それでは始めるか…」  ガーランドは表情に笑みを、そしてその瞳に怒りを滾らせ、見上げていたファントムサイザーをよじ登り、胸部コクピットまで辿り着く。その動きはサイボーグ強化による、人間離れしたものであった。  そのまま機体内部へと滑り込む。既に起動は完了しており、手馴れた操作でハッチを閉じ、シートベルトで身体を固定しつつ、両手で操縦桿を握り締めた。  そのタイミングを見計らったかのように、両サイドに備えられたスピーカーに、通信回線が繋げられた。リロードである。 『ガーランド。ゲート開きます』  その言葉通り、ファントムサイザー正面の二重構造のゲートが展開していく。その先に広がるのは、遠近感の乏しい漆黒の宇宙だ。  機兵を固定していた治具は全て取り外され、無重力によって機体がゆっくりと浮かび上がり固定台を離れていく。  同時に、ファントムサイザー背面のスラスターフィンが展開された。 「ファントムサイザー、出るぞ!」  ガーランドは宣言と共にスロットルを踏み込む。スラスターフィンからフレアを撒き散らしながら、ファントムサイザーは弾かれるように発進した。
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