過去

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気付くと白い壁。 響は病院に運ばれたのである。 意識を手放す前、血に染まった手で119を押していたそうだ。 「痛ッッ。」 起きあがると腕に強い痛みが走った。 見てみるとそこには、 肩に月のあざが出来ていた。 両親の死因は出血多量。 腹部を3回も刺されていて、 あげくの果てには、 胸を1回刺されていた。 霊安室に横たわる自分の両親。 突然の出来事に 響は混乱していた。 学校はそれ以来いかなかった。 だが毎朝毎朝同じ時刻にむなしいリビングに響きわたる 電子音。 ――ピンポーン そうさゆりだった。 親戚の人がだれも引き取ってくれなかった響を心配して、 毎朝声をかけてくれた。 勿論響は外に出ない。 徐々にではあるが、 響の心は立ち直っていった。 ――そして夏。 両親が死んで一年がたった、 3年生の夏。 久しぶりに開けるカーテンと、久しぶりに開く携帯がとても新鮮に思えたある日の朝、響は決心したのだった……。
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