言葉のゴミ箱(転)

3/11
前へ
/11ページ
次へ
荒い呼吸を繰り返したまま、吐き捨てる。 「     」 有り得ない。 今度はそう言った。空気は振るえないが、俺の中には響いた。 言葉が向かうはずだった対象を手に取る。 コップに見えるぐらい小さなゴミ箱。小銭で買ったものだ。普通に売られていた。別に魔法使いにもらったわけでも、絵本から飛び出してきたものでもなくて。 「     」 おもちゃだろ? これはおもちゃのはずだろ? なのに、なんで声が出ない? 夢か。安直に考える。頬を引っ張った。痛い。かなり痛い。 「   」 覚めろ。 夢から覚めろ。覚めろ。 願ながら引っ張る。千切れるぐらいまで引っ張った。 頬に熱が集まる。触れるとジンジンと痛い。 「     」 夢じゃない? ははは。肺の中の空気を吐き出す。笑えたように俺の耳には聞こえた。  
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加